エンジニアとクリエイターに寄り添い、変化し続ける

レバテック社長が考える、事業の存在意義

今後日本のIT人材の不足は数十万人規模で拡大し、日本の経済発展に大きな影響を与えると言われています。この深刻な社会問題に向き合うべく事業展開をしているレバテックの林社長に、事業のことやこれからの展望について聞いてみました。

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プロフィール

林英司(Eiji Hayashi)
レバテック株式会社 代表執行役社長

2011年にレバレジーズ中途入社。レバテックフリーランスのキャリアコンサルタント、事業部長を経てレバテック(株)代表執行役社長に。 キャリアコンサルタント時代には、年間約300人のフリーランスエンジニアのカウンセリングを担当し、企業とエンジニアのマッチングに尽力した。現場を離れた今でもキャリアコンサルタントの資格を取得するなど、常に現場に目を向けて事業を運営する。

日本経済発展のボトルネック、「IT人材不足」にとことん向き合う

レバテックについて教えてください。

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 レバテックはエンジニア、クリエイターに寄り添ったサービスを提供しており、2017年8月にレバレジーズから分社化し、独立させた会社です。現状は職業に特化したサービスがメインで、フリーランス・正社員・未経験からのスタートなど、さまざまな形で職を探しているエンジニア・クリエイターと企業のマッチングを支援しています。

私たちが目指すのは、

『エンジニア・クリエイターの価値を最大化させて働きやすい社会をつくり、日本経済のボトルネックの1つであるIT人材不足を解消すること』

そのためには3つの環境をつくることが必要だと考えています。

1、なりたい人を増やす
 エンジニア・クリエイターが魅力的な仕事だなって思ってもらえる環境をつくること。当たり前ですがこれがないと「なりたい人」は増えません。逆に魅力的な職業であればある程、当然なりたい人は増えていくはずです。そのためには報酬の水準を高めていくことはもちろん、フレキシブルに働ける環境も必要になってきます。

2、なりたい人を後押しする
 エンジニア・クリエイターになりたいと思った人がすぐにその職種になれるような環境をつくること。大学や専門学校でITを学んでいなくても、それを目指せる環境や人脈、技術に関する習得が定期的にできることが重要です。またそれだけでなく、未経験でもエンジニア・クリエイターとして就職できるためのトータルフォローアップがあることで、職種転換も気軽に行ってもらえるようになります。

3、海外のリソースを使う
 海外のエンジニアリソースを有効活用できる環境をつくること。国内のエンジニアに対しての環境提供も重要ではありますが、それだけで今のIT人材不足を解決できるとは考えていません。海外でプログラミングやデザインを勉強した人が日本で仕事を探せるサポートが必要ですし、そして日本企業も今以上に海外エンジニアの可能性に視野を広げていくことが必要です。

「IT人材不足が経済発展のボトルネックになっている」とはどういうことでしょうか。

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 経済産業省が2016年6月に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2015年時点の人材数は約90万人であり、この時点ですでに約17万人が不足しているとされています。さらに、2019年をピークに人材供給は減少傾向となり、2030年の不足規模は約59万人に及ぶと試算されています。IT利活用の多様化やIT需要の拡大にも関わらず、国内のIT人材の供給力は低下し続けていき、人材不足は今後より一層深刻化してきます。

 ITが急速に発展している時代において、特にエンジニアが足りない状況は、すなわち企業が新しいサービスを創れない状況を指しています。実際にエンジニアがいないとどうなるか。新しいサービスがリリースされるタイミングが遅れるか、リリースを諦めるというネガティブな意思決定をせざるを得なくなっていきます。そうなると、本来生まれるはずだった価値あるサービスが生まれなくなる、もしくは生まれるのが遅れてしまう。さらに現代のWebサービスは完璧な状態でリリースされることは少なく、リリース後も顧客の要望に沿って改修していくモデル(アジャイル開発)が主流となっています。故にリリース後もPDCAを回してサービスを改善させていくことが求められます。ユーザにとってより価値のあるサービスを提供するためにも当然そのスピードは早い方がいいですよね。

 今現在こういったモノづくりを担うエンジニアが不足している状況の中、プログラミング教育が必修化されたり、生活者の技術習得を後押しするような制度が導入されたり、国全体で技術習得を後押しする動きも広がってきています。こういった世の中の流れの中で、レバテックを通じてこの社会課題に向き合っていきたいと思っています。

IT人材不足が続く中で、レバテックはどんなことに取り組んでいるのでしょうか。

 レバテックでは「エンジニアとPMに絶対的安心を与える」というミッション、「エンジニアとPMの日本一の相談相手」というビジョンを掲げています。ここで言うエンジニアは求職者、PMはプロジェクトマネージャーを指します。

 もともとレバテックはフリーランスエンジニアの支援を主軸にしていました。僕が社長に就任したときも事業価値の大部分はそこでした。ただ当時から、レバテックが世の中に貢献できることは他にもまだまだあると考えてましたし、もっと根本から社会問題を解決したいという気持ちがありました。それが先程のIT人材不足の解消につながっていきます。

 レバテックが創り上げたい世の中、それは「エンジニア・クリエイターの価値が認められ、それに見合う報酬が支払われ、また自分の希望によって働き方の選択肢が広がっている世の中」です。さらには選択肢を広げるために必要な学びの場も提供され、プログラミング未経験者・初心者にもチャレンジする機会が与えられているような状態。そんな環境があればエンジニア・クリエイターという職業はより魅力が増し、職業選択の幅も広がるので、実際に「なりたい人」が増えるはずです。レバテックはこうした世の中を創りあげるべくサービスを展開しています。もともとフリーランスエンジニアの就労支援からスタートしたレバテックも、正社員の就労支援をする「レバテックキャリア」、未経験からエンジニアを目指せる「レバテックビギナー」のように、エンジニアとクリエイターのニーズに合わせてそのカバー領域を広げています。

 また今後、レバレジーズグループは積極的に海外進出をしていきます。そこでレバレジーズ本体と連携し、海外エンジニアのリソース確保も着手して日本のエンジニア・クリエイター不足という問題に取り組んでいけたらと考えています。

レバテックが問い続けた、自分たちのあるべき姿

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「エンジニアとPMに絶対的安心を与え、日本一の相談相手になる」
このミッションとビジョンはいつ、どのように創られたのでしょうか。

 2005年のサービス開始から8年後、2013年にできました。当時組織も大きくなっていく中、レバテックとして、そしてメンバー1人ひとりが「何のために仕事しているか」を問われるようになったタイミングでした。

 自分たちがなりたい姿から掲げると、我々がすでに発揮している社会に対する本来の価値から大きくズレてしまう可能性があったので、我々が目指したい像をただ掲げるのではなく、現状すでに発揮している価値から探すことにしました。すでに、サービスとして成り立っているということは「サービスとして世の中に対して何かしらの価値を提供していること」になります。

 そのため、世の中から本当に求められていることをミッションにしようと決め、ひたすら生の声を集めました。実際に顧客に「なぜレバテックを利用しているのか?」や社員が日々仕事をするなかで「大事にしている価値観」などに関するアンケートを取りました。その要素を抽象化する作業を繰り返して行き着いたのが、「安心」というワードでした。例えばメールでのレスポンスが早いとか、提案の質が良いとか。加えて細やかなフォローがあるなど、『ポジティブな行動で相手に(何かを)与えれている状態』を言語化すると、「安心」だと。そこから、「日本一の相談相手になる」という具体的な理想像を導きました。

ミッション・ビジョンを言語化してから、組織に変化はありましたか?

 いえ、作っただけでは組織は何も変わらないですよ。そこからが本番でした。みんながミッション・ビジョンを腹落ちさせて仕事を進める上での判断軸としてもらうことが必要です。そのための試作はめちゃくちゃ時間と手間をかけてやりましたね。ステッカーやTシャツなどのグッズも作ったし、みんなが対話できる場も定期的に開きました。

 加えて、ミッション・ビジョンが体現化された「コアバリュー」という行動指針を作りました。レバテックのメンバー間で、コアバリューを強く体現した人には手書きのメッセージカードを送り合うという文化も作りましたね。メッセージカードのエピソードの中でも、毎月特に表彰に値すべき行動をしたメンバーを定期的に表彰しています。こうやって徐々にミッション・ビジョンが根付いていったからこそ、今の組織があるのだと思います。

エンジニアの人生とともに広がるレバテック

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レバテックがこれから考えてる姿があれば教えてください。

 エンジニア、クリエイターの人生で必要なサービスを揃えていきます。エンジニアという職業は、まだ出来て間もない仕事で、若い人が非常に多いですよね。その人たちが将来行き着くキャリアは、実はまだハッキリしていないというか……どういう風に年を重ねていくんだろうと不安を持っている人も多いと思います。そういった不安を解消できるサービスはもちろん、キャリア以外に関しても、エンジニアが良い人生を目指していく上で困っていることがあったら、それを解決するサービスを展開していきたいですね。

「エンジニアの人生と共に広がりをみせていく」そんなイメージですね。

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 はい。ただ「キャリア」に拘っている訳ではないです。もちろん人生においてのターニングポイントになりやすいので優先的に支援すべきだと考えてはいます。

 将来的には「レバテックがあれば、エンジニア、クリエイターには迷わずなれる。そして安心して働き続けられる。キャリア以外でも、何の不安もない状態」というのが理想ですね。エンジニア、クリエイターが将来を不安に感じる中で、人生の節目節目に寄り添って必ずレバテックが助けてくれるから、「エンジニアを目指しても大丈夫だ。やり続けても大丈夫だ」と思ってもらえる存在を目指しています。

組織面では今後どんな姿を目指していますか。

 良い意味で今は、レバテックが完成されているとは思っていなくて、できることはまだまだあると思うんです。組織自体も、サービスが拡大するにつれて注目されることが増えましたが、常に変革者としてチャレンジャーでいたいです。きっとこれからもチャレンジし続けると思います。

 事業が拡大すれば組織も安定もしてきますし、必然的に組織としての動きも重たくなります。ただそこで現状に満足して新しい動きや改善を止めたら、実現したいミッション・ビジョンは離れる一方。ミッション・ビジョンについては、本当に一生追いかけるものであり、達成しきる瞬間はないのかもしれません。だからこそ我々は常にチャレンジし、成長し続けなければならないと思っています。