「ブランド戦略室」が追求する、サービス価値の統合と強化

レバレジーズのマーケティング・専門職組織【vol.1】

オールインハウスのレバレジーズグループではマーケティング職や専門職と呼ばれるエンジニア職・デザイナー職の社員が多く在籍しています。それぞれの部署ではどのような業務を担い、どのような価値観を大切にしているのでしょうか。今回は「ブランド戦略室」について、責任者の棚橋さんに話を聞きました。(聞き手:徳永)

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プロフィール

棚橋(Tanahashi)
マーケティング部 ブランド戦略室 マネージャー
2012年新卒入社。東京大学文学部卒業。マーケティング部に配属後、デジタル広告運用担当に。入社3年目で、自社の広告による集客活動を統合して担うプロモーションチームの責任者へ抜擢。2019年にブランド戦略室を立ち上げ、マネージャーとして各事業のブランド構築を担当する。趣味はボードゲーム。

「ブランド戦略室」とは?

設立背景

 ブランド戦略室は「ブランディングの方法論を取り入れ、一貫した価値をユーザーに感じてもらうこと」をミッションに2019年に発足しました。ブランドとは、ロゴなどの識別記号と結びついてユーザーの頭の中に蓄積された「そのサービスの持つ価値」のことです。そしてブランドを形成するために必要なのは、広告・Webサイト・営業など、ユーザーとの複数の「接点」で一貫した価値を感じてもらうこと。そのために「サービスの持つ価値は何か」を整理し、それぞれの接点に反映することで、さらなる価値強化に注力しています。

 ブランディングの方法論を取り入れる必要性を感じた背景は2点あり、1点目は「顧客獲得コストの上昇」です。集客拡大において、ニーズが顕在化した瞬間の検索行動だけを対象にした集客には限界があります。それを解決するために、ニーズが顕在化する前からサービス価値を理解しておいてもらうことや、ユーザー体験に一貫性が出るように整備してクチコミを増やすことによる「集客全体の底上げができないか」を考えました。

 2点目は、マーケティング担当の「ユーザー理解の解像度」を高める必要があったためです。レバレジーズのマーケティング組織は、広告・サイト設計・CRMなどの機能ごとに担当が分かれていますが、各サービスのユーザー像と、そのユーザーへの提供価値について共通理解を持てていない状態でした。そのためブランド戦略室が中心となってユーザー像を明確化していく必要がありました。

ブランド戦略室の仕事

業務内容

 ブランド戦略室にとっての成果とは「サービスとして望ましいポジションを、ユーザーの知覚の中に作る」ことです。そのために各サービスの「市場内の立ち位置」を設計し、マーケティング戦略に落とし込み、戦略実行を推進するという役割を担っています。この役割遂行に向けて、実際の業務は大きく2つのフェーズに分けられます。

【フェーズ1】ブランドのコンセプトの明確化・マーケティング戦略の設計
【フェーズ2】コンセプトのサービス活動への浸透・実行

【フェーズ1】ブランドのコンセプトの明確化・マーケティング戦略の設計
Q1:私達のサービスが存在する、時代的・社会的な必然性は何か
Q2:私達のサービスは、どんな人のどんな課題を解決するのか
Q3:私達のサービスは、どんな手段でその課題を解決するのか
Q4:その解決手段を支える、私達ならではの発想やこだわりは何か
Q5:そのサービスは、未来においてどんな発展を遂げていくのか
Q6:私達のサービスは、どのように競合他社と差別化するのか

 フェーズ1のゴールは、上記Q①〜⑥の「問い」に対する答えを定義し、ブランドコンセプトやマーケティング戦略に落とし込むこと。現在、ブランド戦略室は社内の主要サービスを担当し、すでに価値発揮できているサービスを後追いする形で、その価値を言語化しています。そのため、そのサービスに携わるメンバーやそのサービスに価値を感じて頂いているユーザーへ丹念にインタビューしながら「探り当てていく感覚」で①〜⑥の答えを定義しています。

 こうしたインタビューに加えて、競合他社がどんな動きを取っているのか、市場や社会がどんな変化をしているのかなどの定量・定性情報も参考に、事業責任者と協議することでやっとブランドとしての方向性が決定します。こうして出来上がったものを「ブランドコンセプト」と呼び、同時にコンセプトを一言で表現した「コンセプトコピー」まで制作します。


【フェーズ2】コンセプトのサービス活動への浸透・実行
 フェーズ2のゴールは、広告・ウェブサイト・実際のサービスなどのユーザー接点にブランドコンセプトを浸透させ、ユーザーから価値を認識してもらうこと。具体的には、広告制作や、ウェブサイトのリニューアル、営業職の理解促進施策を行います。関係部署が急激に広がるためタフな業務ではありますが、コンセプトに沿ってサービスが変わっていく様子をはっきりと感じられる、非常にやりがいあるフェーズです。



キャリアチケット「ブランドコンセプト」を例に

 ブランド戦略室でブランドコンセプトを定義した例として、新卒の就職活動を支援する「キャリアチケット」という就職活動エージェントサービスを紹介します。このサービスにおいては、フェーズ1の各問いは下記の定義をしました。

Q1:「キャリアチケット」が存在する、時代的・社会的な必然性は何か
A:多くの学生にとって、就職活動が苦しいものになっている現状。キャリアについて知識を持たないまま、ナビサイトの促すままに大量にエントリーし、人気やネームバリューなど、他人のモノサシにとらわれた結果、キャリアに悩んでしまう学生の力になることを目指します。

Q2:「キャリアチケット」は、どんな人のどんな課題を解決するのか
A:働き方への価値観がはっきりしないまま、漠然と大手企業を中心に受ける学生を対象にしています。課題は、下記の3点です。
・1人で就職活動を進めることで的確なフィードバックを得られず、アウトプットを改善できない
・情報が溢れ、自身の価値観に最適な情報を選び取ることができない
・キャリア設計よりも、人気やネームバリューなど「他人のモノサシ」に基づいた会社選びを行い、競争率の高い戦いを強いられる

Q3:「キャリアチケット」は、どんな手段でその課題を解決するのか
A:ナビサイトのような「1対マス」の情報発信ではなく「1対1」のサポートで課題を解決し、下記3点を実現しています。
・知名度や業界などの表層的な情報ではなく、自身の価値観で会社を選ぶことの重要性への気づきを促す
・企業の人事目線でのフィードバックを提供する
・学生が自身の価値観にフィットする企業との出会いを提供する

Q4:その解決手段を支える「キャリアチケット」ならではの発想やこだわりは何か
A:下記4点です。
・終身雇用制度が崩壊した今、職能を身につけてキャリアを歩むべき
・「就職活動=ファーストキャリアの選択」と捉え、長期的なキャリア形成を軸にするべき
・知名度や業界に囚われず「入社後にどう成長したいか」を重視して企業選びをするべき
・上記の観点に立つことで、学生は自身にフィットした会社選びができる

Q5:「キャリアチケット」は、未来においてどんな発展を遂げていくのか
A:下記2点を中心に発展していきます。
・就職活動前の学生、中高生、家族を対象としたキャリア教育
・「就活カフェ」による直接的な接点の拡大

 こうしてできたのが「さよなら、やみくも就活。」というコンセプトコピーです。やみくもに大量エントリーを強いられる就職活動ではなく、キャリアを見据えた質の高い就職活動を実現するというサービス理念を反映しています。このブランドコンセプト作成・浸透によって、キャリアチケットでは事業責任者やマーケティング責任者との共通理解が生まれ、施策の判断基準の統一が可能になりました。

 またフェーズ2として、就職活動支援サービスを提供する現場での「学生とのコミュニケーションの取り方」も、ブランド戦略室が設計に着手しています。ユーザー接点を横断することで、コミュニケーション内容が一貫性を持ちはじめています。今後は、サービス収益へのインパクトを出せるよう、施策を拡大していきます。

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ブランド戦略室が直面した難点

複数の社内組織との連携

 ブランド戦略室は、セールス・マーケター・エンジニア・デザイナーの各職種を巻き込んで施策を実施し、定義したブランドの形骸化を防ぐ必要があります。複数の社内組織の中心に立ち、各部署を動かす中で感じている難点は3つあります。

難点1:「第三者的立場」からの巻き込み
 ブランド戦略室が「このコンセプトに基づいて施策実行しましょう」と言うだけでは、全職種を巻き込んで施策を実施することはできません。そういった組織連携の難しさは常に感じています。だからこそ気をつけているのは、各職種のリーダー層との「目線合わせ」です。具体的には、コンセプト作成段階から、事業部長・営業職リーダー・マーケティング部の主要メンバーと意見を交わします。このとき、事業部があらかじめ持っている「事業戦略」からズレないように、コンセプトを作成することを意識しています。既存事業には、その事業が始まったときから大切にしている「理念」や「事業戦略」があります。その事業戦略に基づいてブランドを明確にすることで、納得感の高いコンセプトが作成できます。

 次に施策に落とし込んでいく段階では、営業職リーダー・マーケティング部の主要メンバーから施策を出してもらいます。このように各職種のリーダー層と目線合わせをすることで、最も現場が納得しやすい形で施策を打ち出すことが可能になります。ブランド戦略室は各職種の間に入り、中間的なポジショニングでブランドの言語化を行っていきます。

難点2:「ブランドの重要性」への理解促進
 レバレジーズは、これまで「ブランド」という概念の定義・浸透への積極投資は行われていませんでした。だからこそブランド戦略室が発足しましたが、社内で過去に前例が無い中で、ブランドという新しい概念への重要性の理解を得ることは容易ではありません。

 そこで、ブランド戦略室では「現場の理解促進」に注力。営業職リーダーに対してブランドの重要性の理解を促すプレゼンテーションをしています。「その事業が社外からどう見られているか」、「ブランド浸透を意識的に取り組むことで事業にとってどんなプラスがあるか」、「営業職の一番の評価軸である売上面でどんなインパクトがあるか」を伝えることで、現場からの理解を得ることに重きを置いています。ポイントは、いかに「可能性が広がるイメージ」を持ってもらえるか。営業職にとっては、ブランド浸透施策は通常業務にプラスαで取り組むことになります。その施策によって、自分の事業が「良いサービスだ」と社会的に認められるイメージを持って持ってもらうことが、社員の原動力になると考えています。

難点3:「捉える時間単位によって発生する差異」の整備
 レバレジーズ営業組織の多くは「1〜3ヶ月単位」で売上目標を設定しています。それに対して、ブランド戦略室は「半年〜1年単位」で施策を打つ必要があり、長期間粘り強く取り組んだ先に成果が得られます。この社内における「時間の流れ方の差異」にどう適応し、いかに営業組織に「長期的な投資の必要性」の理解を深めてもらうかが重要です。

 キャリアチケットの場合だと、営業メンバーが市場状況の変化を捉えながら「学生にとって必要性の高い」セミナーを日々刷新し、実施しています。この動きは現場判断によってスピード感を持って対応できるメリットがある一方、それらのセミナーの全てで「コンセプトと整合性を取れているか」に注意を払う必要があります。例えば「やみくもにエントリーするのではなく、キャリアを見据えた質の高い就職活動を実現する」というコンセプトと整合性の取れていないセミナーを実施してしまうことは、ブランド上望ましくありません。そこで形成されたイメージと、次の学年の学生のもつイメージの間にギャップがあると、口コミがうまく作用しなくなるからです。短期的な市場変化や売上目標に向けて対応していく中で、現場社員にいかに「コンセプトを重要視してもらうか」が今後の課題です。

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ブランド戦略室の環境

・各サービスの事業部長に、自ら提案できる環境
 例に挙げた「キャリアチケット」のコンセプトを整備し、ブランドとしてのスタンスを決めて発信していく動きを始めたのは、ブランド戦略室が事業部へ提案したことが発端でした。同様に、他サービスについてもコンセプト整備を提案しており、各サービスの事業部長に自ら提案できる環境があります。

・事業軸チーム、機能軸チームを横断して仕事ができる環境
 レバレジーズのマーケティング組織は、事業軸チームと、機能軸チームに分かれています(関連記事はこちら)。

 機能軸チームにあたるブランド戦略室では、事業戦略を基に「サービスとして、市場の中でどのようなポジションで認知されることを目指すか」というマーケティング戦略について調査・起案し、提案していくことができます。また同時に、そのポジショニングを実現するための広告やサイト上でのコミュニケーションを規定していく、機能軸チームの施策も担うことができます。「キャリアチケット」や「レバテック」など、どのサービスでも同様の方法で業務を行っています。

・事業軸チーム、機能軸チームとの協力環境
 例えば、キャリアチケットの戦略設計の場合、情報収集として行う社内インタビュー・ユーザーインタビュー・デスクリサーチの段階から、サービスのマーケティング責任者と共同で対応を進めています。それらを基に落とし込んだ、キービジュアル・タグライン・ブランドステートメントなど、具体的な表現戦略も事業軸チームのマーケティング責任者と共同で進めており、事業軸チーム・機能軸チームとの協力体制があります。

ブランド戦略室で大切にしている価値観

1、ユーザーの生の声にフォーカスすること
 サービス価値を探る過程では、インタビューを重ねることでユーザーの生の声にフォーカスすることを重視しています。レバレジーズのマーケティング組織は、データをもとに判断し施策を回していくことが得意で、その強みを活かしてサービス拡大を続けてきました。この強みに加えて、ブランド戦略室が設立されたことでユーザーの生の声から本音を探ることで施策に落とし込む力も強みにすることが期待されています。

2、高い学習意欲を持つこと
 ユーザーから得られた知見や情報を解釈し、効果的な施策へと展開していくためには、前提となる知識体系が必要です。社内の他部署と比べ、私たちの部署はまだ設立から間もないですが、戦略に関わる根幹部分に携わるため、理論を拠り所にしながら知識・経験を積む必要があります。そうして視野を広げつつ実践を続けることで、自身のスキルに変換することが重要だと考えています。

3、強いこだわりを持ち、目標に向き合い続けること
 ブランド戦略室は「ユーザーのサービス利用時に生まれている価値を掘り出し、世の中に伝える」ことができ、非常に大きなやりがいがある仕事だと考えています。一方で成果が見えづらい側面があり、また落とし所の見えないコンセプトワークを実施する場面もあります。そういった場面でも、達成すべき大きな目標に向けて「向き合い続けるタフさ」を持つことで、ブランド戦略室の仕事にやりがいを持って取り組むことができると考えています。

おわりに

今後の目標

 「サービスブランドを強化するための方法論を、社内で確立していくこと」です。人材事業のような無形商材のブランド作る場合は特に「ユーザー目線での価値と強み」について、事業全体で一貫したビジョンを持つ必要があります。そのために行うべきことは、ユーザー像と提供価値の捉え方を整えること、つまり社員の「頭の中」を統一することです。

 自分たちのサービスがどんなユーザーにとってどんなベネフィットに繋がっていて、それは自分たちのどんな活動から生まれていることなのか。それぞれのサービスの強みをきちんと言語化し、意識的にその価値を強化できる体制を作り上げていくことで、今以上に選ばれるサービスになっていくと考えています。それを社員全員が同じロジックで認識している状態にするために、ブランド戦略室をインターナル・マーケティングを担えるチームにしていきます。