どん底からベストマーケターへ。ゼロからデータドリブンな組織へと導いた、若手マーケターの軌跡

f:id:leverages200546:20210726201358j:plain 2021年4月に行われたレバレジーズグループオンライン全社総会で、栄えあるベストマーケターを受賞した井上さん。医療介護事業を担うメディカル事業部を、ゼロからデータドリブンな組織へと導いていった彼ですが、そのキャリアは順調なものではありませんでした。幾度となく挫折を乗り越え、今ではメディカル事業部にとって欠かせない存在になっている井上さんに、その山あり谷ありなキャリアについて詳しく聞きました。(聞き手:杉江)

<プロフィール>
井上(Inoue)
マーケティング部データ戦略室 ビジネスアナリティクス グループリーダ
大阪大学工学部卒業、2017年新卒入社。入社後はテクノロジーメディアラボに配属され、法人向けのマーケティングコンサルティング業務に従事。現在はデータ戦略室に所属し、データ活用基盤の設計・整備からデータ分析までを一貫して担当している。

ゼロからデータドリブンな組織へ
成果が見えづらい中で、模索し続けた2年の日

ベストマーケターの受賞、おめでとうございます!受賞された感想を教えてください。

ありがとうございます。自分の受賞を知ったときは、もちろん嬉しかったですし、光栄に思いました。しかし、同時に「本当に自分で良いの?」という戸惑いがあったのも正直なところです。

僕がやってきた仕事は、成果が見えづらい分野なので、誰の目から見ても会社への貢献が分かる人が評価されるべきなのではないかという気持ちがありました。

戸惑いがあったというのは意外です。成果が見えづらいとのことですが、普段どんなことをされているのでしょうか?

データ戦略室という部署で、データの活用を通じて事業部の成長を支えていく仕事をしています。文字通り「成長を支える」ので、僕たちの仕事に対する成果は、はっきりとした数字で出るわけではないんですよ。

例えば、データを使った施策を打ったとします。それにより現場社員の行動が変わり、お客さんへのサービスの質が向上して、顧客満足度も高くなったとします。データは、ここで初めて価値が発揮されたと言えるんです。

データは数字を出して終わりではなく、適切な形で活用されることにこそ意味があります。なので僕たちデータ戦略室の目標は、データ自体を整えていくことはもちろん、現場の社員に「データを使う意義」を理解し、実際に活用してもらうことにありました。

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目標にしていたということは、今まで事業部内でデータの活用はあまりされていなかったのでしょうか?

そうですね。僕が担当しているメディカル事業部では、営業管理システムを新しく開発したり、ツールを導入したりするなどデータの活用に向けた動き自体はありました。

なので、事業部側でデータを取り入れたいというニーズ自体はあったと思いますが、「事業成長に向けてデータを活用する」ことに対して積極的なアクションは取れていなかったように思います。

データを上手く使えると、事業部にとってはどんな良いことがあるのでしょう?

事業部の現状をきちんと把握できるようになると、マネージャーも現場社員も事実に基づいた、より筋の良い施策が打てるようになることですかね。

データの裏付けがないまま意思決定をしようと思うと、人は経験や勘に頼らざるを得ません。判断の基準が定性的なものである限り、組織の成果は属人的なものになってしまいますので、それを是正することには大きな意味があります。


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例えば、これまで営業進捗に関する「統一したデータ」が事業部内にはなかったんですよ。指標などの数値の名前は同じでも、定義がそれぞれのチームで違ったりして。

追う指標や数値がチームごとに異なると、課題設定の置き方もリーダーに依存してしまいますよね。課題は営業活動の結果である数値から導き出すものですから、見ている数値や、データの出し方がバラバラだと目標もチームごとに異なってしまい、事業部全体で同じ方向に向かうことが難しくなります

事業の成長を考えたときに、それでは非効率ですよね。なので、定義を統一した営業進捗データを使ってもらい、全てのチームが同じ目標や数値を追えるような環境を整えることは、事業全体の効率化のためには不可欠なんです。

とはいえ、あまりデータを使って仕事をする習慣がなかったところに、それを促進していくのはなかなか難しそうな印象を受けます。どのようにしてデータの活用を現場まで浸透させていったのですか?

ひたすら現場社員への壁打ちを繰り返していました。まずヒアリングを行い、実際に現場が抱えている課題を見つけるところから始まります。

そして課題を解決するためのデータを出力し、モニタリング環境の開発をします。その後、現場社員に自分たちが作ったモニタリングを使ってもらえないか提案する、という流れを色々な案件で繰り返していました。

中には、全然使われずに眠っていった可哀想なデータが山ほどあります(笑)。

単純に「事業部の課題はここにあるから、このモニタリングシートを使って改善してね」といってもダメなんです。

データを使う意義を伝えるだけでは、実際に見てくれるまでに至りません。なので、データをきちんと見てもらうための方法を考える必要がありました。

例えば、現場の社員が実際に使っているモニタリングのフローに、新しい項目を追加してみたり、経営企画部の方を通して現場の社員と話をする機会をもらったり。

今思えば、結構泥臭いことをやってきましたね(笑)。そうした約2年に渡る努力の末、現場社員にもデータをきちんと使ってもらえるようになりました。

今回の受賞は、事業部をデータドリブンな組織へと導けた、この経緯を評価していただけてのことだと思います。

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背水の陣で挑んだデータ戦略室。
「自分たちの仕事の価値」を信じ続けて挙げた大きな成果

データの重要性について、改めて考えさせられますね...。井上さんは、なぜデータ戦略室で働くことを選んだのですか?やはり元からデータを扱うのが得意だったのでしょうか。

全然得意ではなかったですよ(笑)。入社当時は、新しいことに挑戦したいという思いで新規事業に取り組んでいました。

元々、今までの人生の中で「何かにチャレンジした経験」が少なかったので、レバレジーズに入社したからには自分の未知の領域に挑もうと考えていたんです。

新規事業に携わることができれば、これまでに経験したことが無い様々なことに挑戦できると考えていました。ですが、チームは2年目の冬に解散。そして、他の部署に異動して1カ月経った頃に、データ戦略室が立ち上がることになったんです。

再び挑戦できるまたとない機会だと思って、そこに僕も参加させてもらいました。なので最初はデータ分析に関する知識などは全くなく、一から勉強していましたね。

新卒の時は、どのような新規事業を立ち上げようとされていたのでしょう?

ITエンジニア向けメディアの、収益化を目指す事業に携わらせてもらっていました。ITエンジニアに向けたマーケティングのコンサルタントとして、広告やイベントの営業・企画設計・運用など、色々なことをやっていたんです。

しかしながら、自身の力不足もあり、事業をうまく成長させられませんでしたね。

2年も一緒にやってきたチームがなくなると聞いて、どんなお気持ちでしたか?

チームが解散すると聞いたときは、もちろん悲しい気持ちや悔しさがこみ上げてきました。しかし同時に、ホッとした気持ちがあったのも事実です。

どれだけ頑張っても成果が出なかったですし、「あのチームはうまくいっていないよね」と周りから言われてプレッシャーを感じていました。

一緒にやっていたメンバーも異動になったり、中には辞める人もいて、かなりしんどい2年間だったんですよ。なので、正直そこから解放される安心感を感じていました。

井上さん、淡々としている印象を受けたのですが...。やはりしんどさを感じていたのでしょうか?

めっちゃしんどかったですよ(笑)。僕は割と感情が表に出てしまうタイプなので、当時周りからはかなり沈んで見えていたと思います。

新規事業がなくなってしまった時もそうですが、データ戦略室に移ってからもなかなか成果が出なかったので辛かったですね。

特に僕の場合は、データ戦略室でメディカル事業部を担当しているのが自分1人だけだったので、「これで成果が出なかったらやばい」とプレッシャーに押しつぶされそうな時もありました

さらにその時期には、同期のマーケターが既にリーダーや責任者としてめちゃくちゃ活躍していたんですよ。そんな状況の中、これで上手くいかなかったら…と思うと、かなりの焦りとしんどさを感じていましたね。
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お1人で奮闘されていたのですね。そのように追い込まれた状況でも、折れずに踏ん張ってこられたのはなぜでしょう。

新卒で入った時からずっと「君はすぐ折れるけど、ちゃんと立ち直るよね」と言われるほど、立ち直ることに慣れていたんですよ、僕(笑)。

ただ、それは自分の力で立ち直ったというよりも、周りの人の助けがあったからこそだと思っています。

僕が関わっていた仕事は、成果が数字になって現れるわけではないので、「自分たちの仕事に意味がある」ことを自分たち自身が信じてやっていかなくてはいけないんです。

でも、僕はずっと自信が無くて、何百回、何千回も「本当にこの仕事に価値があるのか」と自問していました。それでも、同じ方向を向いて「絶対に価値がある」と信じて一緒に進んでくれたチームの支えがあったからこそ、ここまで頑張ってこれたのだと思います。

なので実際に自分が担当した事業部が、データドリブンな組織として機能するようになったときの喜びはひとしおでした。

数字が全てではない。
そこからは読み取れないものを捉えてこそ、データは価値を発揮する。

実際にデータ戦略室での仕事を「価値がある」ものに導いていった井上さんですが、今までの経験から学んだことはありますか?

改めて実感しているのは、「顧客のニーズを正しく理解すること」の大切さです。

僕にとっての顧客は社内にいる営業やマーケターたちになりますが、相手の置かれている状況や環境、抱えている課題などを正確に捉え、それらをきちんと理解した上で適切な解決策を出すことがとても重要です。

データ戦略室に移ってからは、この意識をより強く持つようになりました。
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ニーズを正しく把握することは、簡単そうに見えて実はかなり難しいと思います。どのようにして「正しく理解」していったのでしょう。

今でも完璧にできているわけではありませんが、大切なことは「どれだけ同じ立場で物事を考えられるか」だと思います。

例えば、営業の仕事は数字で成果を表すことが多いですが、その数字になった理由は分からないですよね。「電話を〇件している」事実は分かっても、どんなことを考えて電話したかまでは分からない。

「とりあえず電話しなきゃ」と思って電話した10件と、「顧客の課題はここにあって、自社のこの商品で解決できる」と考えて提案した10件では全然違いますからね。

そういった、1つ1つの行動の背景まで考えるためには、データだけでは分からないことがたくさんあります。数字は結果なので、そこだけで判断せずに、まずは同じ状況に自分を置いて、どういう考えでその数字に至ったのかを知ろうとする姿勢が大事だと思います。

データ戦略室の井上さんが、数字が全てではないと考えているのは非常に面白いです。今後の目標は何かありますか?

直近は、データドリブンの組織体制を継続していくと共に、よりデータ活用の精度を高めていきたいと思っています。そしてデータの活用自体が、自社の競合優位性になるよう導いていきたいですね。

また、データ戦略室自体も大きくしていけたらなと思っています。今データ戦略室にいる社員は8名ですが、社内にはデータの整備や指標の設計など、やれることはまだまだあります。

これからも色々な部署でデータ戦略室の価値を発揮できるように、人員も増やしていきたいです。

データが好きとか得意とかはあまり関係ないので、それよりも「事業部をもっと成長させたい」「社内で働いている人に価値を提供したい」と思ってくれる方と一緒に働きたいです。
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井上さん、ありがとうございました!

良い意味で「データを扱っている人」っぽくはなかった井上さん。データを管理している人が、数字以外のことに価値を感じていることは驚きでもありましたが、同時に魅力でもありました。自分の「仕事の価値」は何なのか。今一度ご自身の原点に立ち戻って考えてみることで、日々の忙しさで忘れてしまっていた、仕事へのモチベーションを思い出せるかもしれません。