事業戦略は誰のためか。年間MVPが考える仕事の本質

新卒セールス

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2021年4月の社員総会で、全社員の中からこの一年で最も会社に貢献した人に贈られる「年間MVP」が、レバテック ITリクルーティング事業部長の泉澤さんに贈られました。新卒1年目から高い成果を残し続け、入社4年目にして事業部長に就任。事業戦略立案、採用、業務最適化など、多方面から事業部を牽引しています。泉澤さんが日頃どんな考えで事業や仕事に向き合い成果を出してきたのか、ビジネスパーソンの成長のヒントを紐解きます。(聞き手:名井)

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Profile
  • 泉澤(Senzawa)
    レバテック株式会社 ITリクルーティング事業部 部長

    2017年新卒入社。レバテック株式会社ITリクルーティング事業部に配属。キャリアアドバイザーを務める傍ら法人営業も兼務し、新卒1年目にして年間売り上げ1位に。翌年から、新規事業の責任者としてレバテックルーキーとレバテックカレッジを立ち上げ、レバレジーズ史上最速で黒字化を実現。2021年1月より現職に就き、事業戦略立案、採用、業務最適化など、レバテック複数ブランドの成長を多方面から牽引。 全社総会では、2017年下期ベストセールス、2018年度ベストチーム賞を受賞。


総会での授賞スピーチの様子

コロナ渦でのギネス更新。チームで勝ち取った「年間MVP」

受賞された感想をお聞かせください。

今回は僕1人ではなく、事業部としてもらった賞だと思っています。苦しい時期もありましたが、設立からずっと挑戦を続けている部署なので純粋に嬉しかったですね。

 

特にこの1年間は色々なことがありました。2020年6月にレバテックルーキーの受注売上が過去最高になり、業界最大規模へと成長しました。翌年の2月に大学・大学院生向けのプログラミングスクール「レバテックカレッジ」を開校。組織としてもデータを活かした生産性向上などに取り組みました。

 

コロナ渦にも拘らず、事業拡大を続け、新しい挑戦ができた背景にはどんな理由があったのでしょうか。

純粋に「チームが強かった」という言葉に尽きると思います。2020年4月、コロナ真っ只中で事業部にも大きな影響が出ました。その中で僕がチームに伝えたことは「このサービスを通して、コロナ禍で就職に困っている学生を一人でも多く救おう」ということでした。それがこの状況下で僕たちに求められている社会的意義なんだと。

 

そこからメンバー一人ひとりが自分のやれることを全力で考え、成果へと繋げてくれました。結果、同年7月に過去最高売上を記録することができたんです。

 

当時、事業部のトップとしてどのように組織を牽引していったのでしょうか。

僕がやったことは2つだけです。一つは、事業が目指す目標を明確にしたこと。もう一つは、そこに行くまでの道筋(戦略)を具体化させたことです。

 

サービスとしてどこを目指しているのか。そのために必要な戦略や戦術は何か。どのように遂行していくのか。これらをメンバー各自が具体的に行動できるレベルまで落とし込んでいきます。そのあとはメンバーを信じて「絶対にできる」と伝え続けるだけです。

 

それだけで、本当に成果は上がっていくんですよ。僕が事業部長に就任した時も、約3ヶ月で状態は改善されていきました。

 

危機的状況の中でメンバーを引っ張っていかれたわけですが、リーダーとしてご自身の強みがあれば教えてください。

強いて言うのであれば、「顧客を理解する力」が他の人よりあるところでしょうか。

 

例えば事業戦略を考える時、僕の場合は戦略を作るという意識はあまりないんです。顧客にとって一番良い状態を考え、それを実現させるための理想のサービスや組織体制はどうあるべきか、そこを突き詰めて計画や行動に落としていっているだけなんです。

 

ユーザーはどんな悩みを抱えてレバテックに辿り着いたのか。サービスを通じてどうなりたいのか。価値体験を最も高めるサービス提供の方法は何か。顧客を知るというのは、そういうことだと思うんですよね。戦略を先に考えるのではなく、顧客起点で戦略は考えていくべきだと。

事業も戦略もすべては顧客のために

顧客理解の大切さに気付いたのはいつ頃からでしょうか。

最初に気付いたのは新卒1年目の時です。当時はどちらかというと自己成長のために仕事をしていました。リーマン・ショックの影響で父の独立が失敗した経緯もあって、自分の市場価値を上げるために成果を残そうとしていましたね。

 

でもそれだと全く成果が出なくて。入社3ヶ月が経ち同期たちが成果を出す中、危機感から働く意味について真剣に考えた時期がありました。その時に気付いたんです。自分は、誰かのために動いたり、何かを犠牲にしたり、相手にギブする気持ちがない中で自分だけが与えられようとしていたと。

 

そこから売上や成果を追うことは一旦置いて、顧客のためだけに思いっきり時間を投下しようと思ったんです。目の前にいる人が「泉澤に会えて良かった」と感じてくれたら、そんな気持ちで仕事を続けていました。するとある時から急に成果が出るようになって、気付けば部内のギネス記録を樹立、年間売上げで一番になっていました。

 

その時にようやく仕事の意味がわかったんです。仕事は自分のためでなく、人(顧客やユーザー)や社会のためにするものなんだと。そこを本質的に理解できたことが、僕の顧客志向の原点です。

 

顧客視点を持つときのポイントを教えてください。

顧客と接触する時間をいかに増やせるかだと思います。USJを再建した森岡氏の著書にありましたが、彼が再建のために最初にしたことは、毎日朝から晩まで現場にいることだったそうです。

 

役職が上がるにつれ、現場から離れるケースは珍しくありません。戦略を描く人間や意思決定者こそ顧客と一番多く接するべきなのに、マネジメントや管理に時間の多くを割かれているのが現状です。

 

僕自身も顧客と対話する場面が最近は減ってきましたが、その分休みの日は商談の様子を録画で見たり、ユーザーのことを知るようにしています。プレイヤーとして直接関われなくても、相手と近い距離にいることは顧客のニーズを知る上ですごく大事だと思うんです。

 

顧客やユーザーの声を聞きながら、事業の方向性や戦略を練ることは大事ですよね。

そもそも事業戦略は顧客のために行う意思決定で、会社の利益になる最適解を探すためのものではありません。例え、ある選択により会社に不都合が生じても、それが顧客にとって一番良い選択であればやるべきなんです。

 

面接をしていると「新規事業を作りたい」と言う人がよくいますが、こういう人は最終的に上手くいかないと思っているんです。「やりたいからやる」では結局は自分ベクトルで、そこに顧客の存在はないんですよね。

レバテックルーキーも顧客起点で着想されたのでしょうか。

はい。キャリアアドバイザーをしていた時、年間500人と面談し転職の支援をしていました。その中で根本のファーストキャリアで躓いている人が多いことに気付いたんです。当時実際に、25歳以下の転職相談者数が2015年から3年間で7倍に伸びていました。

 

であれば、エンジニアのキャリアを根本的に理解している自分たちが、ファーストキャリアとなる新卒向けの就活支援をできれば、顧客のためになる。それがレバテックルーキーの着想でした。

 

なるほど。レバテックルーキーを始めた後、レバテックカレッジも始めていますよね。

レバテックルーキーのサービス開始当初、登録者数も順調に伸び、月間の就職相談も数百件程ありました。でもその中には、プログラミング未経験でエンジニアとしての就職が難しい方々も少なからずいらっしゃいました。プログラミングを学ぼうにも金銭的理由で学べない。そもそも学ぶ場がない。そんな課題を抱えていました。

 

彼らがきちんと学べる場を作ろうと始めたのが、レバテックカレッジでした。だから価格帯にはすごく拘っています。安価だけどエンジニアになるための最高のカリキュラムと環境が揃っている、そんなサービスを目指していました。

 

結局、僕は新規事業を作りたいわけでなく、顧客に合わせてサービス展開をしているだけなんだなと思います。

 

顧客目線を大事にされている泉澤さんですが、顧客メリットと収益で選択を迫られる場面もあると思います。その時はどう判断していくのでしょうか。

これは明確で、事業として収益にならないのであればやらない方が良いです。事業として続かなければ、結局は顧客に価値を提供し続けることができないので。

 

レバテックカレッジについて話すと、特にこういった教育事業は単体だと収益に繋がりにくいのが現状です。でもそこに就職支援事業の繋ぎ込みをしっかり行うことで、収益に繋げられています。世の中に就職支援事業に苦労している企業は多いですが、レバテックルーキーは日本で最もエンジニアの就職支援に強いエージェントだからこそ、それができるんです。

 

顧客に必要とされ、更に事業も収益化できるのであれば、事業としては必ず成功します。こういったビジネスモデルを作っていくことこそが、僕のような事業責任者の役割だと思っています。

社員の幸福追求こそ究極の顧客志向

事業作りにおける失敗はありますか。

顧客志向に寄りすぎて失敗したことがあります。レバテックルーキーの立ち上げ期に、顧客にとって一番良いものを作ろうとチーム全員で走っていました。でもそれを追求しすぎた結果、メンバーが疲弊してしまって。

 

外からは過去最速で黒字化した事業部として、評価はされていました。一方で当の組織状態が健全であったかというと、自信を持ってそう言える状況ではなかったと思います。サービスの質も徐々に落ちていったんですよね。

 

その時、自分が何を一番大事にすべきか考え直しました。長期的に事業が発展する構造は何かと自問する中で、メンバーが幸せでやりがいを持ちながら働いている状態が大切だと気付いたんです。実もこれもある種の顧客志向だと思っています。社員が仕事に誇りを持って健康に働いていたら、そのサービスの受け手である顧客も幸せなはず。そう信じて日々仕事をしているからこそ、自信を持って世の中にサービスを届けられています。

 

泉澤さんのチームは一体感があるように見えますが、その秘訣はなんでしょうか。

レバレジーズには、会社の理念である「社会課題の解決」や「関係者の幸福」に心から共感できる人たちが集まっています。その価値観の結びつきがチームの強みになっていると思います。仕事に対して前向きでどんな状況でも常にポジティブでいられる、苦しい時も問題を解決しようと受け止められる。そういった人が集まっているから、何があっても頑張ろうと、チームとしてもポジティブでいられるんだと思うんです。

 

チームメンバーに一番楽しかった時を聞いたら、「コロナで業績が下がった時期」と言う人もきっと多いのではないでしょうか。あの時はほぼ全員が毎晩遅くまで働いていて、決して楽ではなかったけど、自分たちの信念や使命感に従って全力で動いていました。

 

これからチームにどんな人を迎え入れたいですか。

人生の中で何かを犠牲にして、誰にも負けないくらい何かに打ち込んだ経験のある人と働きたいです。僕の友人で、在学中にコミュニケーションデザインに没頭していたら、東京オリンピックのピクトグラムの制作委員になった人がいます。彼の場合は、いわゆる「普通の大学生活」を犠牲にして、「コミュニケーションデザイン」に人生をかけていました。だからこそ人としての凄みがあったし、話していても面白いんです。そういう人は仕事にも情熱が持てるし、信頼もできる。何かにコミットした経験から知性もついているんですよね。

 

確かに何かに没頭できる人は、仕事においても成果を出せるイメージがありますね。

最近周りと話していると、「市場価値の高い職業に就きたい」「〇〇は手に職が付くし、かっこいい」など言う人が多いと感じます。もちろんキャリアにおいて、最良の選択を探すことはとても大事です。ただ僕が仕事をしてきて感じているのは、「選択してからの努力の方が何倍も大事」だということです。

 

阪急電鉄を成長させた実業家・小林氏が残した有名な言葉に、「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ」というのがあります。これは、最初に与えられた役割や仕事が自分にとって満足なものではなくても、一生懸命役割を果たして成し遂げなさい。そうすれば周囲からの信頼を得て、次の役割を与えられる。その繰り返しで、自分自身もステップアップしていくという意味です。

 

まずは自分が置かれた環境で、その道を正解にするための全力の努力が大切だと思いますし、それによって自分のキャリアも磨かれていくと思います。僕自身も自分の選んだ道を正解にできるよう努力を続けていこうと思っています。

 

泉澤さん、ありがとうございました。

ビジネスマンの中には、仕事を「自己成長の手段」として捉えている人も少なくないと思います。そんな中で「今の仕事を続けていて成長できるのか」と、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。しかし泉澤さんは迷うことなく言い切ります。「顧客のため」に成果を追求することで自身が成長できる、と。今ある目の前の仕事にモヤモヤを感じている人も、自己に向いたベクトルを一度外に向けてみると、思わぬ新しい発見があるかもしれません。

 

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