2019年度新卒エンジニア研修レポート(前編)

技術新卒

カルチャー

こんにちは。レバテックのシステム開発やレバレジーズのエンジニア採用を担当している森實です。今回は、本年度行った2019年度版新卒エンジニア研修について2回にわたってご紹介します。まずは、前編をお楽しみください。

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Profile
  • 森實(Morizane)
    メディア企画部 テクノロジーセンター長

    新卒で大手SIerに15年間勤務後、2018年にレバレジーズに入社。現在はグループ全体のエンジニア組織を牽引しながら、自らもコードを書くエンジニアとして活躍。外部では、日本XPユーザグループのスタッフ、「BIT VALLEY -INSIDE-」を主宰する傍ら、認定スクラムプロフェッショナルとして様々なイベントでの登壇実績も持つ。プライベートでは子どもとキャンプや登山、モータースポーツ観戦などに出かけるアクティブ派。

レバレジーズグループの研修について

 

 エンジニア研修の話に入る前に、レバレジーズグループの新卒研修についてご説明します。毎年、新入社員は入社から約3ヶ月に渡って研修を受けていきます。レバレジーズでは職種別採用を行っているため、研修内容は職種によって異なりますが、一番はじめの全体研修は全職種で行います。ここでは働くうえでのマインドやビジネスマナーをテーマとして扱います。そこから職種毎に分かれて職務的な研修を行っていきます。エンジニア職の場合は、マーケティング・デザイナー職と合同でマーケティング基礎、営業研修を終えたのちに、さらにエンジニアだけの専門研修に入っていきます。

 

 

 エンジニア研修では、以下の2つの目的を達成するために、チームで1つのサービスづくりに取り組んでもらいました。エンジニア研修に至るまでの間に培ったマーケティングや営業の知識をフル活用できる研修設計にしています。

 

エンジニア研修の目的

 

1、サービスオリエンテッドな発想で技術による社会貢献を実現する
2、技術の引き出しを増やすこと

 

 レバレジーズグループのエンジニアチームでは、「サービスオリエンテッドな発想で技術による社会貢献を実現する」というミッションを掲げ日々ものづくりを行っています。このミッションには「単なる自己満足のための技術追求ではなく、サービスによる社会貢献を私たちエンジニアがテクノロジーで支える役割を担っていく」という意味が込められていて、私たちが最も大切にしている考え方です。このミッションを体現してもらことを研修の1つのゴールにおいています。

 

 そしてもう1つが、自学自習する精神を身につけてもらうこと。エンジニアとは技術変化が激しいため、常に学習し成長し続けなければならない生き物です。それゆえ自ら未知のものへ進んで取り組むマインドがとても重要になります。

 

研修設計のポイント

 

 3つの要素と、ふりかえりを徹底させることを大事にして設計しました。各要素を説明します。

 

 

 

-①スクラム基礎
– 透明性(カンバン)
– 検査(イテレーション毎リリース、ユーザーレビュースプリント)
– 適応(ふりかえり:KPT(A)、YWT、FDL(+NA)、ワールドカフェ)

 

 スクラムとはチームで仕事を進めるためのフレームワークで、これによりチームのその時々の現状を顕にしていくことができます。特に私達のようなサービサーの開発ではリリース周期が圧倒的に短いこともあり、チームの状態を見える化しておくことがとても重要です。その感覚を体得するためにこのスクラム基礎を取り入れています。

 

-②ペア作業、モブ作業
– 1人作業による属人化の禁止
– 複数人で課題を共有し対処
– はじめての技術に対するチーム学習

 

 会社によっては1人で努力することも推奨されますが、組織全体のレベルを底上げするためにはチーム単位でのレベルアップを目指した方が何倍も効率的です。具体的な手法としては、モブプログラミングなどに代表される複数人で1つの案件や課題に取り組むことで、チームのスキルアップと品質の向上という両方を実現させていくことができます。

 

-③リーンスタートアップ
– ビジネスモデルを何度も練り直す思考の体得
– ヒューリスティック
– 確証バイアスの認知

 

 サービスを形にする時、人はどうしても「そのサービスが最高である」というバイアスをかけてしまいがちです。しかし、そのバイアスを何度も何度も客観的に見直して、ビジネスモデルを作り直していくことが重要です。これらの抵抗感をなくしていくことこそが、サービサーのエンジニアが身につけるべき習慣の1つと考えています。

 


-④ふりかえりの徹底

 

 

 ①②③をふまえて、研修という成長機会の効果を最大化させていきます。それには、他者から受けるフィードバックをもとに、ネクストアクションを考えてプロセスカイゼンを繰り返していくことが非常に重要です。研修設計では特にこの「ふりかえり」を最も重視しています。

 

実際の研修の進め方

タイムボックスでのスケジュール管理

 

 今回の今回の研修は、午前と午後をそれぞれ4時間のタイムボックスに分割し、9:00に始まり18:00に終わる健全なスケジュールで2週間かけて行いました。エンジニアの仕事では特に、限られたリソースの中で最大限の結果を出すことが求められます。そのため意図的に時間を有限に設定することで、仕事の模擬体験をしてもらいます。

 

 

チームによるスケジュール決め

 

 後ほどチーム分けについて触れますが、チームが決まったあとは上記の紙をもとに自分たちで最終日までのスケジュールを立ててもらいます。カリキュラムが決まっているのは初日の月曜日と各金曜日の午後枠のみ。ピンク色で塗り潰しているところに、チームごとに自分たちでやることを記載できるようになっています。スケジューリングにあたっては、限られた時間の中で最大限の結果を出す、自分たちが満足するだけのサービス開発にならないようにするという観点から、以下の制約事項を設けました。

 

・開発スプリントの制約事項
1、一枠4時間のスプリントを厳守してください
2、スプリントには「開発」「ユーザーレビュー」「アイディアソン」
スプリントを入れることができます
3、各スプリントでは「スプリント計画」「スプリント実施」「ふりかえり」
を行ってください
4、開発スプリント終了時には、必ず動くソフトウェアをみせてください
5、開発スプリントでは、チームで一番不得手な技術を選択してください
6、開発スプリントは3回を超えて連続して設定することはできません
7、適宜ユーザーレビュースプリントを挟んでください
8、タスク起票(スプリント計画時のタスク分解)がされていないタスクの実施は厳禁です
9、作業は1人では行わず、2人以上で実施してください
10、30秒で誰でもプロジェクトの状況がわかるカンバンを維持してください

 

この研修でやること、やらないこと

・この研修で踏み込むこと

エンジニアとして期待していることへの理解を深める

アイディアソン、ハッカソンの実践

研修に対するふりかえり

 

・この研修では以下は踏み込まないこと
収益モデルの評価の現実性
デザイン、UIの細かい部分

 

チュートリアルセッション

人事部新卒専門採用担当の講話とふりかえり

 

 

 まず人事部の竹内から研修の狙いやゴール像を話してもらいました。この話を受けて「研修中に自分たちは何を学び、次のセッション以降どう活かしていく」のかを考えてもらいます。ここでは、YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)というフレームワークを使ってふりかえりを行ってもらいました。

 

 次に、メディアシステム部部長の久松から、レバレジーズにおけるエンジニア組織のミッション・ビジョンについて話してもらいました。その後およそ5分の久松の話から、またふりかえりを行います。このように、セッションごとに何度もふりかえりを続けていくのが、この研修の一番の特徴といえます。

 

 

アイスブレイク〜チーム分け

 

 ここからようやくチームワークに向けて動いて行きます。まずはチーム分けです。

 

 まずは「全員で指標を決めてエンジニアリングスキルの高い順に並んでください」というお題のもと、自分たちで必要な時間を定め一列に並んでもらいました。

 

 

 このチーム分けの研修では「全員で指標を決める」というところが肝になります。チームとして動いていく上で、共通の認識を持つことの大事さを意識してもらうことを目的にしています。ただ「スキルが高い」と言っても人によって定義はバラバラです。この研修では何もない中で全員が等しく説明できる状態を作りあげる必要があります。スキルのレベル感がまちまちな状況だからこそ、自分たちで納得して「全員の物差しを揃える」という活動を行っていきます。議論の末、30分ほどかけて一列になることができました。

 

 そこからチーム分けです。スキルレベルの違うメンバーが集っているため、「彼らの決めた」エンジニアリングスキルの順でチームの力量を平準化します。前から番号を数え、奇数のチーム、偶数のチームの2つのチームが誕生しました。2週間このチームで1つのサービス開発を行ってもらいます。

 

アイスブレイク〜チーム分けのふりかえり

 

 ここでもふりかえりを行っていきます。先程同様、このセッションにおける気付き、学び、そして次のセッションで更にどうするのか。個人でYWTを行います。

 

サービスの根幹を決める、アイディアソンセッション

チームごとにのテーマを設定

 

 本格的にアイディアソンセッションに入っていくにあたって、チームごとに対象とする課題、テーマを決めてもらいました。1つのチームでは「死ぬ前に自分の人生を正しく振り返る」、もう1つのチームでは「新しい趣味を見つけたい人が心から楽しめる趣味を見つける」というテーマを設定。それぞれのカラーがはっきりと出ていますね。(最終日に向けてこのテーマはどんどん形を変えていくので、あくまでスタート時のものになります。)

 

アイディアソン

 

 このセッションで使ったツールは以下6つです。

 

①仮設キャンバス
 ギルドワークスさんが公開している事業モデルを表現するフォーマットです。今回の研修では、それをベースに2枚に分割する改良を加えたものを利用しています。

 



②マンダラート
 マンダラートは、1987年にデザイナーの今泉浩晃氏が考案したアイディア発想法です。このマンダラートを使って、思考を発散させていきます(と書いていますが、実際はテーマを因数分解し、落とし込んでいます)。

 

 

③サービス名命名シート
 対象とした課題、それに対する分解した要素(マンダラートで出したアイディアの種)、そして実現するアイディア(ブレイン・ライティングとドット投票で出したソリューション)を書き出し、それらが自分たちの目的、ビジョンの実現に繋がっていることを再確認した上で、名前をつけていきます。

 

 

④ユーザーストーリーカード
 ユーザーストーリーカードはソリューションが決まったあとに、そこに必要な機能をユーザー目線で一覧にしていきます。今回は、大きめの付箋に、「〇〇として、△△をしたい。なぜなら××だからだ」というもので記載します。

 

【テンプレート】

 

〈ユーザーの種類〉として

〈達成したいゴール〉をしたい

 なぜなら〈理由〉だからだ

 

 記載が終わったら、優先順位をつけて一列に並べ、壁に貼り出します。

 

⑤アクティングアウト
 今回のサービスについて、目的、ソリューション、必要な機能が洗い出されたところで、チーム毎に寸劇で表現してもらいます。
サービス利用前後のシチュエーションも加味し、ユーザー体験として共感できるか、他チーム、他の社員からのフィードバックを受けながらアイディアを更に洗練させます。

 

⑥血判状
 名前だけ見ると物騒ですが、チームの団結をはかるための1つのセレモニーです。
自分たちがこれから2週間、取り組んでいくテーマについて、チームメンバーとしてコミットすることを誓います。

 

 

 これらのアイテムは2週間、目につくところに貼り出して、自分たちがチームである、ということを意識して動くことを動機づけるものとなります。

 

アイディアソンふりかえり

 ここでは、チームとしてのワークが中心となったので、個人でのYWTのほかに、チームでのFun / Done / Learn(+NA)というものを用いてふりかえりを行いました。Fun / Done / Learnはやっとむ氏によるふりかえりのアプローチで、楽しかったこと、やったこと、学んだことの三点でベン図を書き、そこにふりかえりをプロットしていくという手法です。そこに加えて私たちの研修では、「+NA」という項目を追加しています。これはレバレジーズの中では非常によく使われる「ネクストアクション」の略です。

 

 冒頭にも述べましたが、ふりかえりを行う理由の1つに、「次にどうするのか」を考えることによる成長促進の要素があると考えています。そのため、チームとして、次のスプリントに向けて、何に取り組んでいくかを考えてもらいます。

 

 

次回は、いよいよハッカソンセッションのご紹介です。
2019年度新卒エンジニア研修後編は8月中旬に公開予定です。是非お楽しみに!

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